お知らせ

2022.12.23

酒豪の成れの果て

コラム
こんにちは。つつみクリニック 上野院 院長の山﨑です。
前回、お酒を飲んで下戸や赤くなるなどの体質によって動脈硬化やある種の癌になりやすいという話をしました。その体質は遺伝によって決まります。

今回は酒豪の方がどのような病気になり、命にかかわるかをお話しします。

問題となる病気は二つが有名です。

一つは肝硬変です。最後は吐血や肝不全、肝癌を起こして死に至ります。有名な疾患なのでここでは割愛します。

もう一つはウェルニッケ脳症です。

ウェルニッケ脳症は飲酒によるビタミン消費と、偏った食事により、脚気の原因でもあるビタミンB1の枯渇による記憶障害や認知症です。
最初のうちはお酒をやめて栄養を摂れば元に戻りますが、そのうち不可逆的な変化を起こします。
そうなると何をしても脳は元に戻りません。この状態をコルサコフ症候群と呼びます。

ちなみに脚気は、病状が進むと心不全を起こします。白米ばかりの生活をしていると脚気を引き起こします。脚気予防には肉類やパン食、麦飯、玄米などが有効です。
お酒ばかり飲んでいると栄養が偏ります。そのため、酒飲みは脚気に罹患する恐れも高いです。

海軍医であった高木兼寛はすでに何らかの栄養素が脚気を防ぐことを疫学(今風に言うとエビデンス)で予言し、実際に海軍の脚気死者を出さなかったことで有名ですが、
陸軍医でもあった文豪・森鴎外は最後までこれを認めず、戦死者よりも脚気による死者が多かったという歴史はご存じの方も多いと思います。

いずれにしてもお酒は適量を楽しく飲むということが大事で、New England Journal of Medicineというアメリカの権威医学雑誌によると、悪影響を及ぼしにくい量は、
1日に赤ワインや白ワインならグラス1杯、ビールだと500mL缶程度、ウイスキーだとショットグラス1杯くらいだそうです(New Engl J Med 2003;348:2)。

但し、連続した週2日は肝臓を休ませないと脂肪肝や肝硬変になるリスクが高まると考えられます。
ちなみに下戸や赤くなる人は量を飲めないので酒豪になりにくいです。
また、アルデヒドとアルコールの両方とも分解が速い人も皮肉にも二日酔いの辛さを知っているため酒豪になりにくいです。
気をつけるべき人は、アルデヒドの分解が速く、アルコールの分解が遅い人で、こういう人たちは酒乱にもなり易いのです。


くれぐれもやけ酒は控え、他人に迷惑をかけない範囲で楽しく飲みましょう。